フェイクニュースはネット上だけの存在か

SNS(Social Networking Service)から発信される情報は、事件や災害が起きた場合、その場にいた誰もがスマホを使い手軽にその場の状況をツイッター(Twitter)やフェイスブック(Facebook)、LINEなどを通じて発信するため、テレビなどの既存メディアより早く多くの人間に伝達される。

しかしSNS情報は、事件や災害があったときなど、被害場所や被害状況を素早く把握するのに多いに役立つが、2016年4月に発生した熊本地震では、「地震で動物園からライオンが放たれた」と市街地を歩くライオンの写真と一緒にツイッターに投稿され大問題となったように、ウケ狙や冗談で流す情報(フェイクニュース)や特定の人物や団体を誹謗中傷した情報も多い。

SNSの情報伝達能力の素早さにはさすがにメディアも勝てず、事件や災害で現地入りしたメディアの多くは、SNSで得た情報を基に取材活動を行い、現地レポートとしてニュースで流している場合が多々あると聞く。

常に新鮮な情報を求めるメディアにとっては、SNS情報は有用なニュースソース(news source)であり、SNSの発信者側からは熱心な閲覧者の関係になるが、問題もある。

例えば、フェイスブックでは、「いいね」が出ると、「いいね」が欲しいあまり、よく似た情報が発信される傾向がある。これでは閲覧者側の意見に合う情報だけが発信され、大衆受けしない情報は抹殺される。もし、別な角度から見た情報を発信すれば、「ネット炎上」の呼び名な通り、大バッシングを受ける。

勢い視聴者の動向と視聴率の推移に過敏なメディアもSNSの動静(いいね)を見て、番組企画やニュース報道を行うようになる。自分と異なる意見を尊重し、多様性を理解する、そんな民主主義の基盤が、自分の意見よりもSNSの動静に振り回さるメディアが高邁な視野に立った報道機関としての役割を果たしているのか不安になる。

先頃、お笑いコンビNON STYLEの井上氏が「道交法違反(ひき逃げ)と自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで書類送検され東京地検で不起訴処分とされたが、昨年12月の報道では、NON STYLEが所属する大手芸能のプロダクションに遠慮してか、一部メディアは、NON STYLEの井上が車を運転中にタクシーと接触事故を起こしたと報道し、タクシーに衝突して逃走した「当て逃げ」の報道を意識的に言い換えていたメディアがあった。

そのくせ、視聴率が稼げると思ったら、相手が誰であろうと思いっきりバッシングする傾向は、日々強くなっている。

これでは、ウケ狙と冗談で「地震で動物園からライオンが放たれた」とフェイクニュースを流した人間と差異はない。

むしろ、報道の自由を盾にあらゆる場所に出入りすることが許される特権を持っているだけに質が悪い。